きっかけはNews Picksでレオスキャピタルワークスの社長がこの本をオススメしていたからです。
資本主義の権化である投資会社の社長がこの本をオススメしていることから興味をもちました。
この本では、本多静六という大学教授が現在価値で数百億円にも上る財産をどうやって築いたかについて書かれています。
単なるノウハウ本や体験記というものではなく、「投資についての考え方」が現在にも通じる普遍的なもので、かつ、「人生観」ともいうべき内容が書かれていることが面白いです。
特に面白いのは、この本では如何にその財産を築いたことだけではなく、どうやって財産を処分したかについても書かれていることです。
著者の本多静六氏は往年になり、財産があることが「良く生きること」に邪魔になるというふうに考えて財産を処分することにしました。その財産をほとんどを寄付することにします。
著者も元々は子孫のために財産を残したいという考えを持っていたようです。
ですが、途中から財産を残すことはむしろ子孫にとって不幸になるということなのでではないかという思いに至ったようです。
著者は「幸せというのは、今の位置がどうあるかではなく、その方向性がどうあるか。上向きであるのか、下向きであるのかが大事」だといいます。
裕福に生まれた人はそこからさらに上向きになるのは大変だから、幸せで居続けるの難しい。
彼は苦学生時代に食べた天丼1杯のうまさを例に幸せについて語り、子孫には「努力をするという習慣」を与えることが大事だと思いいたります。
本田清六さんの投資法とは?
本多静六さんの投資方法は有名かもしれませんが、「1/4投資法」と言われています。
日々の稼ぎの1/4を貯金しておいて、ある程度たまったらそれを投資に回すという投資法です。
ボーナスなどの一時金は全て貯金に回します。
こうして投資の余力を作っていって、最初の投資の元手を雪だるま式に増やしていくという考え方です。
彼は色々な株式にバランスよく投資をしていて、今で言うポートフォリオ経営の形で投資をやっていたようにも見えるます。
1日1ページずつ文章を書いていたという記述もあり、現代であれば毎日動画をあげるユーチューバーやブロガーのような存在かもしれません。結果、大量の書籍も上梓しています。
単なる投資ノウハウではなく人生観
著者の成功には時代背景ももちろんありました。
山林を買い取ってそれが何百倍にもなったというような話は今ではなかなかない話かもしれません。
しかし、著者の考え方は投機的なものではなく、長期的な目線に立った投資です。
本多静六は林業に対して「このような立派な林がほったらかしになっているのは日本の損失である」と考えて、
この林を取得して育てようと考えます。
また長期的な目線に立って、林業から得られる継続的な利益を基金にして育英基金を作っています。
あくまでも長期的な目線に立って投資をしているという素晴らしい考え方だと思う
また林を寄付して何十年か経った後にその功績を認められて公園に呼ばれた時には、
その誘いを断っている。
自分がやったことはあくまでもキッカケであって、実際にその林が立派になったのは周囲の方々や時間のおかげだという考えに基づいているようです。
功名心や自分の利益のためではなく、あくまでも周囲のためや、世の中のためになるようなお金の使い方をしようというのが彼の素晴らしいところだと思います。
何よりもそれを通じて自分自身が幸せになれると考えているところが素敵です。
なぜ財産を処分したのか
彼が60を過ぎて財産を寄付することに決めたのは、お金を持っていては不幸になるということに気がついたからです。
お金があっても幸せになるとは限らないというの話はよく聞きますが、実際にその具体的な例が生々しく書かれています。
何十年も前の話とは思えない、現代を生きる私たちにも非常に共通するところがあると思います。
コロナ関連で世界が経済的に大混乱している中で、本多静六のような考え方はこれからの私たちにも非常に参考になると考えます。
日々の株価の上がり下がりなどに一喜一憂しないで、長期的な目線に立って社会のために役立つような投資を心がけていくという考えは、回り回って自分にも大きな幸せをもたらすのではないでしょうか。
そして自分の子供や周囲の人達にとっても幸せな未来を築いていけるような気がします。
全く別の本ですが、最近「シン・ニホン」という本を読んで同じように著者の長期的な未来に対する熱い思いを感じました。また別に書きたいと思います。
本田清六の「私の社会学体験」
私の財産告白には、「私の社会学体験」と言う文章も記載されています。
こちらは財産だけではなく本田清六さんの経験した人生について色々と語られています。
そこで語られていることが、生き方や考え方仕事の仕方といった非常に汎用的なものに渡ることが印象的でした。
有名な書籍、デールカーネギーの「人を動かす」に近いようなことが書かれているように感じました。
人を動かすにはどのように接したらいいのか、仕事がうまくいくにはどのようにしたらいいのか、というのことが
本多静六の観点から書かれています。
例えば
- 若い人に仕事を頼む場合は、当人の実力よりも少し上のことをお願いすることを気をつけていた
- 部下の名前をしっかりと覚えて、各の特性を覚えておいて意識的に声がけする
- 人に注意をする時には一度に色々言わずに、一回につき指摘はひとつだけにする。
- 何度か注意する場合は間をあけて、十分に自己反省する時間をとる
- 何度言っても直らない場合はそういった考え方もあると言ってその人とは自分は別の考え方であるという風にしっかり割り切って付き合いをしていく
こういった、現代社会でも十分に使えるような考え方が書かれています。1950年代には書かれているというのは非常に興味深いと感じた
本多静六という方は財産を築いただけでは、仕事において非常に通底した考え方を持っている人だと思います。