また共働き子育て世代にとっては他人事ではない事件が起きました。
育休を取得したのちに、パタハラ(パタニティハラスメント)により、うつ病を発症した男性。
その後、回復して医師からは復帰許可が出るも会社からは休職を命じられ、
「育休を取得したことに対するパタハラが原因」として訴訟を起こした。という事件が起きました。
もし男性の訴えが事実だとしたら非常に腹立たしい事件です。
男性が告白した会社の対応とは
ビジネスインサイダーにこの男性へのインタビュー記事が載っていました。
記事では以下のように3ヶ月の育休取得後に会社の態度が一変したとしています。
そんなウッドさんを取り巻く状況が大きく変化したのは、3カ月の育児休業を経て職場に戻った2016年3月のこと。彼を迎え入れたのは、様変わりした職場の対応だったと、ウッドさんは言う。
海外オフィスチームのヘッドとして指揮を振るってきたウッドさんだが、「それまでの仕事は取り上げられ、少人数のクライアント業務だけやるように言われました。仕事を完全に干されたのです」
「ハードで長時間労働の職場ですが、仕事は大好きです。私が引き受けた機関投資家部門の収益は拡大し、成果を上げてきました。会社もそれを評価してくれていた」
そう話すウッドさんにとって、育休明けに待ち受けていた会社の措置は、衝撃的だった。
ウッドさんには、海外在住の未婚のパートナーとの間に生まれた子どもの体が弱いこと、シングルファザーとして育てていかなければならない事情があった。このため、行政関係の数々の手続きを行い、子どもの面倒をみてくれるフィリピン人のシッターを手配。これまでどおりに仕事をしながら子どもを育てる体制を、育休中に整えていたという。
にもかかわらず「そもそも私の育休中に、もう彼は辞めるよ、戻ってこないという話がされていたようです。復職の日から『どうして戻ってきたの』と、周囲に言われました」
ウッドさんによると、重要なミーティングの日時を教えてもらえなかったり、自分が出席できない時間帯に会議が設定されたりしたという。新規採用面接や顧客訪問といった基幹業務から外され、海外出張も命じられなくなったとウッドさんは語る。
「一方で夜中のミーティングや膨大な時間のかかるリサーチをやれという。ハラスメントは明らかでした」
これはおかしいと人事に訴えても、「上司と話してくださいと、取り合ってくれなかった」。
会社はパタハラではなく、「体調面の配慮」を理由に休職を命じているとしているそうですが、インタビューでこの男性は経緯も時系列で説明できていますし、写真も載っていますが快活そうな雰囲気です。
少なくともインタビューにまともに答えられるくらいの元気がある人間が、医師に許可をもらっているにも関わらず、一方的に「体調面の配慮で休職命令」というのは違和感があります。
育休取得とうつ病前後の経緯をみると、会社は男性に対してサポーティブな態度を示していないようです。
会社側と男性との間で相当の確執があったことは想像できますね。
男性の言う通り、育休によるパタハラが原因なのか、それとも背景が他に何かあるのかはわかりません。
しかし、もしこれが育休取得によるパタハラが原因だとすれば、企業としての信頼は失墜しますね。
三菱UFJモルガンは子育てサポート企業?
訴えられている三菱UFJモルガンスタンレー証券は、自社HPでより良い職場環境を目指して、ダイバーシティやワークライフバランスへの取り組みをしていると記載しており、育休制度についても触れています。
さらには「子育てサポート企業」として認定された企業に国から贈られる「くるみんマーク」も取得しているとしています。
これ相当な皮肉じゃないですかね。
マークを発行している厚労省は大丈夫でしょうか?(ちなみに過労死事件で社長が辞任するまでに至った電通にもくるみんマークは与えられていました)
パタハラの有無によらずとも、うつ病に陥った従業員が再び働きたいといっているのを拒んでいるというだけでも相当なマイナスイメージです。
過去に成果を出してきた社員に対して、育休やうつ病の際に会社がサポートしてくれないようでは、企業として優秀な社員は離れていってしまうでしょう。
もちろん、この会社の魅力は給与なのだと思いますが、今の時代、社員を使い捨てにするような企業は社会的な信用を失い、経営陣の責任問題にまでなります。
すでに海外でも報じられているようで、日本の雇用状況や企業姿勢へのマイナスイメージが拡散される事態にも繋がっています。
日本の「働き方」を見直そうというこのご時世、この男性が誠意ある対応を受けることを日本社会は応援するべきではないでしょうか。
追記:三菱UFJモルガンが男性に解雇通知
その後、会社側が男性に解雇通知をつきつけてきたようです。
まだ裁判が始まったばかりのタイミングでの解雇通知(予定ですが)は、世間の印象はよくないでしょうね。それくらい徹底抗戦するぞ、という意思表示なんでしょうか。
会社側としては「社内手続きに則り適正に対応してきたにもかかわらず、ウッドさんが勝手に会見を開いたり、機密文書を裁判所に提出したりといった行動をしている」ことを解雇事由にあげているとか。
しかし、この主張には無理があるように感じます。
ウッドさんが人事部と同じように社内の手続き(=社内規定)に則って本件を進めなきゃいけないのなら、「会社側に問題があるという会見を開きますが、よろしいでしょうか。」と広報部に許可を取れ、ということでしょうか?
そうしたら、当然会社は社内手続きとして「差戻し」して、会見を開かせないですよね。機密情報と言っている書類も同様に裁判所に提出できない。
その結果、ウッドさんは泣き寝入りすることになるでしょう。そして結局解雇されてしまう可能性が高い。
だったら、やはり会社のルールに逆らってでも自分の主張を訴えないと、勝ち目はないですよね。
社内ルール上はウッドさんの行為はルール違反になるのでしょうけど、「コンプライアンス」の観点からいうと、この状況で一方的に解雇するのはリスクな気はしますけどね。
会社のルールを守らせるというのは当然コンプライアンス上大事ですが、それ以上に法令遵守、そして現代のコンプライアンスでは法令遵守だけではなくて、社会規範的なものまでも意識しなければなりません。
たとえ「法律上解雇通知をする権利がある」といっても、それをこのタイミングで行うことが本当に適切なのか。社会認識と照らし合わせてどうなのかを再度考えてもよいのではないでしょうか。