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IT業界(SI業界)は働き方改革をリードする業界になれるか?

2018年1月20日

かつて現代版3K(きつい、帰れない、給料がやすい)などど揶揄されたIT業界、特にSE(システムエンジニア)ですが、最近は状況が異なるのでしょうか?

日経新聞に「SE職「脱ブラック」へ 働き方改革、実は先行 」との記事がありました。

曰く、

かつて労働環境が悪く「ブラック」職種とも言われたシステムエンジニア(SE)の処遇が変わってきた。IT(情報技術)大手を中心に労働時間が減り「ホワイト化」が進む。強みを持つITを活用して働き方改革に率先して取り組んだことで、気が付けばほかの職種を先んじ始めている

ということで、働き方改革でSEをはじめとして、IT業界(ここでは主にSI(システムインテグレーター)業界を指す)の労働環境が改善しているというのです。

残業削減・健康管理の取り組み

記事では、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)やSCSKなど大手のSIerが社員の残業削減や健康管理に取り組む姿が書かれています。

これらの企業では月の残業時間が15時間〜20時間程度と記載されていますが、月の営業日が20日だとすると1日あたり1時間以下の残業時間に収まっているということですね。

わたしもシステム系の仕事をしたことがあるのですが、かつてのIT業界、特に受注側であるSIerたちの働き方というのは過酷なものだったと思います。

上流工程から下流工程への多重請負構造

システム開発に関わる人たちが自らをIT土方(どかた)なんて卑下している場合もあります。システムをつくるというのはスタイリッシュでクリエイティブというようなものではなくて、建設現場でマンションをつくっている土方のオッチャン、お兄ちゃんのような泥臭く、労働集約型の仕事であるという意味です。

産業構造としても、IT業界(ここでは、システムを作るSIer業界)は建設業に非常に近くて、大手企業が受注した案件を、下請けに発注し、さらにその下請けが孫請けに発注するという多重請負構造になっています。

そのため、大手企業のSIerに務めるSEは技術者といっても、クライアントの要件をまとめたり、仕様の概要を作ったりするだけで、実際にゴリゴリ手を動かすのは下請けのさらに下請けくらいの人たちだったりします。(さらに一部が中国だったり、インドだったりへオフショアされる場合もありますが。。。)

なので、記事に出ているようなCTCやSCSKのような大手企業の社員は、たしかに働き方改革で職場環境がよくなっているのだと思いますが、その下請けが気になります。

下請けの働き方にも改善の傾向

そう思って読むと、記事の後半には下請け企業への配慮もするように求められつつある現状が記載されていました。

 「下請けへの発注状況の数字を見せてください」。昨年、あるIT大手が経済産業省から情報提供を求められた。システム業界は建設業のように元請けがいて細かい作業を下請けが受注する構造。「しわ寄せのいく下請けは労働環境が悪くなりやすい」(大手)

NECは昨年10月、ソフトウエア開発の下請け企業など120社に自社の働き方改革の手法や課題を公開し始めた。今後個別に相談に乗る。下請け11社は独自に「働き方改革タスクフォース」を立ち上げた。

さらに、元請けと下請けの間だけではなくて、システムを発注する側である顧客側にも理解を求めるようにしているとあります。

富士通は顧客企業に社員の健康への取り組みや働き方改革について説明を重ね配慮を求めている。林博司執行役員は「少しずつ理解を得られるようになり、時間外労働時間は着実に減っている」と強調する。

これは非常に大事な視点だと思います。

人月商売の商習慣から脱却できるか

日本はとにかくお客様至上主義で、パッと思いつくのは飲食店などのサービス業ですが、IT業界も同じで「お客様の言うことは全てお応えしなければ」という姿勢で、無理な要求に応え続けている節があるように思います。

だから結局働き方改革を成し遂げるには、顧客の理解と協力が欠かせません。

本来的にはIT業界は働き方改革と親和性が高いはずです。

どうしても生身の人間が手をかける必要のある飲食業や本当の建設業と違って、システム開発の場合は時間(人月)と成果が必ずしも結びつきません。

同じ1時間でも、スーパーエンジニアと普通のエンジニアの出せる成果は10倍にも100倍にもなります。(ベテランの大工さんと素人の大工さんの実力差はあるでしょうけど、ここまでの差はでないはず)

だから、本来は時間で縛ること自体が間違いなのですが、SI業界はこれまで何人の人がどれくらいの期間関わるのかという「人月」で商売をしてきましたし、顧客側もそれを受け入れてきました。

SI業界の働き方改革には、受注側/発注側双方が協力して、この人月での商習慣を改めていくことが重要だと思います。そのためにも業界関係者全体の意識改革が必要だと思います。

優秀な人材を引きつける環境整備

男性の育休もそうですけど、結局制度をつくっても利用されないのは会社や職場の「空気感」とか「雰囲気」が一番大きいと思います。

プログラミングが習わせたい習い事1位になったり、義務教育に組み込まれるといった話も出ていますが、これからの優秀な若い人たちを引き付けるには間違いなく労働環境の改善が必要です。

ぜひ、SI業界に関わる人みんなで、業界の意識改革を進めて、優秀な若者たちが働きやすい環境を整えていただきたいと思います。