40代、50代の方々と話していると、自分が入社した頃の40代、50代の人たちよりも随分と感覚が若くなって話しやすくなったなぁと感じます。
一方で「あ、そこはやっぱり感覚が違うのかな」と思うところもあります。
その一つが「仕事だから頑張って当然」という言葉です。
目次
仕事だから頑張って当然なのか?
ベテランの方々とお話していると、「仕事だから辛いことがあるのも当然」とか「仕事だから嫌なことも頑張って当然」という発言をお伺いすることがよくあります。
実はわたしも昔は全然特段の違和感を感じませんでした。
関西の田舎にある実家は自営業なのですが、それこそ身を粉にして働いています。仕事とはそういうものだと思っていました。
ところが、子供が生まれて育休をとって、自身の働き方を見直す中で、
この「仕事だから頑張って当然」という言葉に違和感を感じるようになりました。
お金をもらっているから頑張らなければいけないのか
「仕事だから辛くても頑張れ」という理由でよく言われるのが、「お金をもらうなら辛いことを我慢して当然」という意見です。
この意見も昔はそうだよな、と普通に受け入れていました。
ところが、考えてみると違和感があります。
どうしてお金をもらう=辛いことを我慢する、ということになるのでしょうか。
お金を払う人は、辛いことを我慢して欲しくてお金を払っているのでしょうか?
違うと思います。
お金を払う人は、何かメリットがあるから払っているはずです。そのメリットがあれば、働いてくれる人が辛くても、辛くなくても関係ない。
(むしろ辛くない方が良いと思うのが人情でしょう)
もちろん、メリットを出すための手段がキツイ肉体労働とか、長時間の作業とかそういうことはあり得ます。
でもそれだって「辛いことを我慢する代金」としてお金を払っているわけではなくて、
その労働からもたらされるベネフィットに対してお金を払っているはずです。
そうすると「お金をもらっているから我慢しろ」はおかしくて、「お金をもらっているのだからしっかりと成果を出そう」とか「お金をもらっているからしっかりお客様のためになることをしよう」というのが正解だと思います。
仕事を辛くないようにするのが上司の役割ではないか
「仕事だから辛くても頑張れ」という言葉は大体上司や先輩から言われることが多いと思います。
でもこれって上司はその部下が「仕事は辛いもの」と感じていることを認識しているわけですよね。
本来仕事って、本人が得意だったり、好きだったりすることをやらせる方がパフォーマンスがあがるはずです。
環境だって辛い環境よりも、楽しかったり快適だったりする環境の方がパフォーマンスあがりますよね。
「お客様にためになることをしっかりやる」、「しっかり成果を出す」ということを目的とするのであれば、むしろ我慢しなければならない状況というのはマイナスなのではないでしょうか。
そうすると上司が部下に辛いと感じる仕事内容や仕事環境を与えておきながら、それを改善しようとせずに「仕事だから頑張れ」という言葉を送るのは全く見当違いな気がします。
もちろん、本人の適正にあっていても時には乗り越えなければならない山があるでしょう。
そういうときに「辛くても頑張れ」というのはわかります。
そのときには「仕事だから」ではなくて、
「これを乗り越えることにはこんな重要な意味がある」、「これを乗り越えることにはお客様に喜んでもらえる」ということを伝えるべきであって、
「仕事だから頑張れ」はやはり思考停止ワードなんじゃないかと思います。
仕事以外は頑張らなくてもよいのか?
「仕事だから頑張って当然」の言葉の裏には、「仕事以外は頑張っても頑張らなくてもいい」というニュアンスが隠れているように思います。
仕事は他のものごとよりも崇高なものなので、頑張らなければいけないけれど、他のことはそれほど重要でないから、頑張っても頑張らなくても自分次第で良い。
というような意味が含まれていないでしょうか。
でも、育児や介護、趣味や遊びと仕事って、そもそも比べられるものなんでしょうか。
「育児だから頑張って当然」とか「趣味だから頑張って当然」っていう言葉は少し違和感を感じますよね。
「仕事だから頑張って当然」という言葉だけは多くの人が無条件に受け入れてしまっていますが、本来は違和感を感じるべきなのではないでしょうか。
滅私奉公→ワークライフバランス→ワークアズライフ
仕事も育児も趣味も、全てが人生=ライフの一部です。
本来、人生の優先順位は本人が決めることであって、世間や周囲の意見は参考程度のはず。
でも仕事だけは、別格と扱われてきました。
昔は滅私奉公で、「自分を殺して」仕事をするのが美徳でした。
それが近年は働き方改革という言葉も出るくらい、仕事とプライベートどちらも大事だといワークライフバランスの考え方が浸透してきました。
でもこれって、ライフとワークを別物と考えている。
人生の中で、仕事=ワークと、仕事以外のもの=ライフと捉えている。
でもこれも変ですよね。
仕事も、趣味も、育児も全てがライフなはず。
だから、私は落合陽一さんが日本再興戦略 (NewsPicks Book) で書いている「ワークアズライフ」という言葉が好きです。
仕事とライフは本来分けるべきものではないはず。仕事はライフの一部であるはずです。
そして、ライフ=人生です。
仕事も育児も趣味も、全て人生なのだから頑張れ!
これはなんだか素敵な響きな気がするんですよね。

