ブラック部活動という言葉を近年聞くことが増えました。
平日はもちろん休日も毎日休みなく行われる運動部の練習。指導するのは普段授業を担っている普通の先生方です。
何時間勤務しても子供のお小遣い程度の手当てしかもらえない。若い先生は顧問になることを断れず、結果土日も部活で休日が全くなくなってしまう。
子供たちも、過酷な練習や大会日程で体を壊してしまう。
こんなブラック企業のような状況をさして「ブラック部活」と呼ばれています。
先生の労働環境が社会問題化する中で、有名になってきた言葉でもあります。
そんなブラック部活動の状況の改善に一筋の光が見えてきています。
今般、スポーツ庁が「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン骨子(案)」を発表しました。
スポーツ庁が発表したガイドライン骨子案には休養日も明記
こちらに全文がありますが、特に注目したいのは休養日を設けることに言及している箇所です。
○ 運動部活動における休養日及び活動時間については、スポーツ医・科学の観点からのジュニ ア期におけるスポーツ活動時間に関する研究も踏まえ、以下を基準とする。
・ 学期中は、週当たり2日以上の休養日を設ける。(平日は少なくとも1日、土曜日及び日曜 日(以下「週末」という。)は少なくとも1日以上を休養日とする。週末に大会参加等で活動 した場合は、休養日を他の日に振替える。)
・ 長期休業中は、学期中の休養日の設定に準じた扱いを行う。また、生徒が十分な休養をと ることができるとともに、部活動以外にも多様な活動を行うことができるよう、ある程度長 期の休養期間(オフシーズン)を設ける。
・ 1日の活動時間は、長くとも平日では2時間程度、学校の休業日(学期中の週末を含む) は3時間程度とし、できるだけ短時間に、合理的でかつ効率的・効果的な活動を行う。
という内容で、ざっくり言うと
(1)週休最低でも2日は休暇(平日1日、週末1日)
(2)オフシーズンを設けて、長期休みを作る(他の活動ができるようにする)
(3)平日は2時間、休日は3時間まで(合理的・効率的に活動する)
というようになっています。
これすごくよいと思います。今企業社会でも広まりつつある働き方改革の部活版といった気がします。
10代なんだから一つの部活だけでなく、他のスポーツや文化部、趣味をやってみて可能性を広げるべきだし、何よりも勉強に力を注ぐべきです。
週休2日あれば1日は体を休めて、もう1日は他の活動をすることもできそうですし。長期休暇は家族と旅行にいったり、他の活動したりと可能性が広がりそうです。
生徒も先生もボロボロにする学校の部活動
わたしも中学、高校と運動部に所属していました。決して強豪校ではなく、普通のチームだったのですが本当に休みがありませんでした。週7日全て練習。1ヶ月に1日休みがあるか無いかという状態でした。
今思うと完全にオーバーワークだったと思います。ある時1日学校行事関係で休んだら次の日めちゃめちゃ思考も体も冴え渡ってびっくりしたことがありました。思えば、普段は練習のしすぎで疲労が取れていなかったんでしょうね。
主顧問の先生はその競技を経験したことが無い人でした。頑張って指導されていましたが、はっきり言えば「根性論」だけで押し切っていました。
「1日休んだらその遅れを取り戻すには3日かかるんだ!」などとおっしゃりながら、生徒にも自分にも鞭をうって、休養日をほとんど設けなかった。
真夏に4時間も5時間も練習したあとさらに追加でランニングしたり、朝練や昼練したり。とにかく「時間をかけてキツイ練習をすればいいんだ!」みたいな感じでした。
結果、1年生時点で疲労骨折や関節を痛めて、3年間ベンチで過ごした部員もいました。わたしも度々怪我をしてました。
きっと顧問も自分がやったことのないスポーツの指導にはとても苦労したと思います。頑張ってくださったと思うのですが、いつもイライラしていた記憶があります。
生徒も先生も疲れていたんでしょうね。でも当時は休みがないのが普通だと思っていたし、疲れていたのだろうけど他を知らないので特に疑問には思いませんでした。
ただ今思うと、頻繁に辞めたいと考えていたと思います。競技は好きだけど、なんというか心から楽しめる余裕がありませんでした。
だから最後の大会に負けて引退する時に「ホッとした」という記憶があります。なんだかせつない話です。
ブラック部活を無くせばブラック企業も無くなる
そんなわけで、当時レギュラー選手でしたけど、頭の片隅ではいつも辞めようか葛藤してました。
それでも辞めなかったのは、部活動を途中で投げ出すようなやつは情けないという、ような空気感が部活や学校全体に漂っていたからだと思います。
運動部>文化部という感じの空気。部活を辞めたら落伍者という空気。強豪の部活を指導する体育教師が学校のルールで誰も(生徒だけでなく先生も)逆らえないという空気。
そんな空気に支配されていたように思います。
これ言葉を少し変えると「ブラック企業」が社員を支配する構造と全く同じ仕組みな気がします。
営業>内勤という空気。会社を辞めたら落伍者という空気。儲かる製品を売る部署が会社のルールで誰も逆らえないという空気。
というような感じでしょうか。この結果、たくさんの人が潰れちゃうわけですよね。
転職というカードがあるはずの社会人ですらブラック企業から脱出できずに苦しんでいるんだから、いわんや中高生がそんな状況から自力で脱出するのは無理でしょう。
先生も公立学校をぐるぐる回る地域総合職みたいな存在だから、その枠組みから自力で抜け出すなんて無理でしょうね。
そんな世界観の中で生きてきた日本人が就職して、「ブラック企業」でまた頑張ってしまう。自分が先生や先輩から受けた「指導」を後輩にも課してしまう(良かれと思ってやることも多々ある)。そんな結果がこのブラック企業が跋扈する日本の労働環境を作っているような気がしてなりません。
だから今回の改革が、「ブラック部活を無くす」ための改革であるなら、それは遠からず「ブラック企業を無くす」ための改革でもあると思います。
働き方改革によって、企業社会の雰囲気も徐々に変わってきました。
是非学校の部活も今のような根性論の世界を改めて「合理的」、「効率的」に運営して、その分を生徒も先生も新たな可能性に挑戦したり、自分の時間を充実させたりできるようにしてほしいです。それが回り回って、5年後、10年後の日本社会をよくすると思います。