企業の働き方改革にならって、教育現場でも教職員の「働き方改革」児童生徒たちの「学び方改革」がはじまっているようです。
佐賀県の多久市の小学校で「児童生徒の学び方と教職員の働き方改革プロジェクト」なるものが開始されました。
佐賀県多久市は、ソフトバンク コマース&サービス株式会社(ソフトバンクC&S)、日本マイクロソフト株式会社の協力を得て、パブリッククラウドを活用した「児童生徒の学び方と教職員の働き方改革プロジェクト」を1月26日からスタートした。
今回のプロジェクトでは、公務および教務クラウドシステムとしてソフトバンクC&Sのクラウド運用サービスと、マイクロソフトの教育機関向けクラウドサービスMicrosoft 365 Educationを採用。市内には9年制の義務教育学校が全3校(多久市立東原庠舎中央校、多久市立東原庠舎東部校、多久市立東原庠舎西渓校)あるが、このすべてにタブレット端末(平成29年度時点で計190台)を導入し、授業の8割の時間で協働学習を実施することを目指す。
以下の記事より抜粋
Office365 Educationとは?
記事に出てくるOffice 365 Educationって知らなかったのですが、教育機関向けのOffice365製品で無料で利用できるようですね。
こちらの記事にどんなものか詳しくのっていました。
Office 365 Educationは、資格が認められた教育機関がテナント登録することを前提として、メールやSkype、SNS、ポータルサイトなど、4つのサービスを無料で利用することができる。
とあって、「Exchange Online」、「Skype for Business」、「Yammer Enterprise」「SharePoint Online」が無料で使えるみたいです。
さらになんと以下のOffice製品まで使えてしまうようです。しかもプライベートにも使えちゃうらしい。
Office 365 Educationには、全学生がOffice 365 ProPlusを無料で利用することができる「Student Advantage」という学生向けの特典もある。
Office 365 ProPlusとは、いわゆるOfficeの最上位版。「Word」「Excel」「PowerPoint」「OneNote」「Outlook」「Skype」「Publisher」「Access」を全部使うことができる。
そしてなんと、1人当たり5台のPC / Mac・5 台のタブレット・5 台のスマートフォンまで、つまり15台の端末で、学内でもプライベートでも利用することができるということだ。
いやー、Microsoft太っ腹ですね。
でもこれって、学生のうちからOffice製品に慣らして、これがないと仕事できないようにしてデファクトスタンダードとして今後も君臨するための戦略ですよね。さすがMicrosoftよくわかっていらっしゃる。
「学習系クラウド」と「校務系クラウド」を構築
今回の佐賀県の例は、生徒側が使う「学習系クラウド」と教職員が使う「校務系クラウド」とを完全に分離しているようです。セキュリティ面からもちゃんと考えられています。
ちょっと専門的な話が多いですが、以下の記事が詳しいです。
この実証プロジェクト(「児童生徒の学び方と教職員の働き方改革プロジェクト」)では、
(1)授業においてITを活用した「協働学習」の割合を全体の8割まで拡大すること、
(2)教職員の校務の効率かと時間外労働の短縮
—の2つを目的として、マイクロソフトのパブリッククラウドを活用する。文部科学省が2017年10月18日に打ち出した「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」に基づき、授業で児童生徒がアクセスする「学習系クラウド」と、教職員が校務で利用する「校務系クラウド」を完全に分離している点が特徴だ。
学習系クラウドは、Microsoft 365 Educationに含まれる「Office 365 Education」、「Windows Defender ATP」、「Microsoft Intune」といったSaaS、および教材配布用の専用アプリストア「Microsoft Store for Business」で構成される。一方、校務系クラウドは、AzureのIaaS上に校務ファイルサーバー、統合型校務支援システム(EDUCOM)、RDS方式の校務用仮想デスクトップを構築している。
ルーブリックプログラムとは?
冒頭のこちらの記事 には「ルーブリックプログラム」なるものの存在が書かれています。
横尾市長が、「出会ってしまった」と表現したのが、マイクロソフトがMicrosoft 365 Educationで提供している「ルーブリックプログラム」。情報活用能力の育成、AI、IoT、ビッグデータなどをけん引するハイレベル人材育成するためのプログラムだ。
興味があって調べましたが、特定のプログラム固有名詞ではなく「評価基準」というような意味の言葉で、ルーブリックをしっかり定めたプログラムのことをルーブリックプログラムと呼んでいるようにみえました。(こちらが参考になります)
ルーブリックとは、子どもの学習到達状況を評価するための、評価基準表のこと。
(中略)
子どもの学びが各評価項目のどのレベルまで到達しているかを測ることで、ブレのない、客観的な評価が実現可能となる。
冒頭の記事でも写真が載っていますが、今回の取り組みではこの評価基準(=学習目標)を明確にして呈示していて、目指すものがわかりやすいというのも特徴なのかと想像します。
総務省、文科省の取組み
電子黒板やタブレット、Office製品を使った授業の様子も写真が載っていますが、これまでの学習環境とは相当異なっていると思います。それこそ多くの小学校は未だに昭和時代と変わらない環境と内容で学習をしていると思いますが、今回の取り組みで提供されている環境は進んでいる大学や企業の環境に非常に近くて、実社会でもとても役立つものだと思います。
ちなみにこのようなICTを使った教育環境の整備について、H28年まで総務省で「先導的教育システム実証事業」、文科省で「先導的な教育体制構築事業」が行われていました。そこには佐賀県以外にも東京の自治体(荒川区など)も出てきます(こちらの資料にありました)
是非こういった取り組みを他の地域にも広げていってほしいですね。