ZOZO前澤社長に社会的責任を求めても意味ないかも

時事問題/その他

ZOZOの前澤社長が1億円お年玉企画(100万円を百人にあげる)っていう企画をやって、賛否両論巻き起こってますね。

「金持ちの道楽」「そんな金あるならZOZOの非正規雇用社員に金やれ」みたいな批判があれば、「個人の金なんだから自由だろ」「夢を与えてくれてありがとう」的な意見もあります。

わたし前澤社長って結構好きなんですよね。

なんていうか、屈託がない人というか。多分この人、普通にいい人だと思うんですよ。たまたまZOZOが成功して大金持ちになっているだけで、別に成功してなくてもこういう感じの性格の人なんじゃないかと。

だからそういう人に「上場企業の社長たるもの社会の規範になるべし」という価値観に基づいた批判と思われる「非正規雇用の人のことを考えろ」というのは、あるべき論としてはわかるけど、ご本人にはあまり響かないんじゃないかなと。

彼のような人からすれば、社員も非正規雇用の人も「仲間」という扱いなんじゃないかなと。

別に彼は上から目線でお年玉企画やってんじゃなくて、普通に自分が使えるお金の範囲で自分がやりたいこと、感謝を示したい相手(この場合はZOZOを応援してくれる人なのかしら)にできることをやっているだけという感じじゃないかと。

これが彼が成功した社長じゃなくても、うまい棒100本プレゼントとか、缶コーヒー10本プレゼントみたいなことをやって喜んでいる人なんじゃないかと。

仲間っていうとなんだかすごく暖かい響きに聞こえるかもしれないけれど、それって結構厳しいものでもあると思うんですよ。

だって、「俺はこのチームの社長という役割でお前は従業員という役割。でも仲間だからそれ以外は平等ね。」というのって、つまりは「稼げないのは自己責任」という論理につながっていく気がするんですよね。

だからZOZOのコミニケーション室長?とかの人もしきりに自己責任とか言っちゃうんじゃないかな。それって、ある種フラットで風通しが良い企業文化の現れでもあるのかなと。でも、誰かに頼りたい人、特に人から言われたことをしっかりやりたいという人たちにとって「いや、俺とお前は上司部下だけど、仲間だから根本的に平等ね。だから自己責任ね」という世界は結構厳しいよな。

これと対比するのが、伝統的大企業の社長とかで、彼らって今でこそ社長だけど新卒で入社した時は同期横並びだったわけです。

それでその時期には、うだつの上がらないおじさんとか、機嫌を損ねると事務処理してくれない御局様とかにも気を遣いながら仕事をしてきているわけで。そう言ったどうしようもない人たちでも、「仲間」じゃなくて、上下関係というそれはそれでストレスな環境で育っている時期があるはず。

でもそういう環境の中で、そういう人たちが、仕事の場を離れると家では大学生の子供を抱えるお父さんだったり、ペットの犬猫を心底愛していたり、アイドルの追っかけだったりという人間的な要素も垣間見たりするわけです。

で、30年くらい経った時に、横一線だった同期たちも、役員、部長、中間管理職、平社員などなどに分かれており、入社した時にうざいなと思っていおじさんやら、御局様になっている同期だっているわけです。

その時に彼らにも人生があり、一人の人間であることを自覚しながら、そう言った人たちも含めて面倒を見るという覚悟を持った人が社長やら役員になっているというわけです。

少し古いけど、踊る大捜査線で、いかりや長介さん演じるベテラン現場刑事が同期で出世した幹部に「お前は上で頑張れ。俺は現場で頑張る」というようなことを言っていたように思います。こう言った世界観が古き良き会社にはあるわけで。彼らのいう仲間という概念は多分こっちなんだと思うわけです。

そういうしがらみがあるから、大胆な改革ができないとか、人件費削れないとかそういうのはあるのだろうけれど、「現場の人」に対する配慮なんかは自身がかつて経験している分、幹部も無下にしないと思うわけです。

そういう伝統的大企業の社長と、前澤さんのように今や大企業だけど最初から社長で、社員は仲間、友達の延長という感じでやってきてそうな人を一緒くたにして「社会的責任をどう考えるか」と言っても詮無い気がします。

これはどちらが良い悪いではなくて、そういう育ち方をして、そういう価値観を持っている人たちの違い。そしてどちらの人たちと仕事をするのがあっているのかということなんじゃないかと思います。

個人的には働く場としては伝統的大企業の社長の下というのは、それなりに暖かい場所だし、精神的な安定しやすいと思います。でもパートナー企業とか、個人的な友達とか、自分が幹部をやるというのなら、前澤さんのようなトップが治めるフラット企業が気持ちいいのかなぁと感じる次第です。

ちなみに前澤さんやZOZOが社会的責任に疎い会社かというと、登録制会員の割引額を支援団体に寄付するサービスを作るとか、意識高いことをやっているわけで、力点の軽重はあれど彼らなりに社会的責任を意識した活動をされているように思います。その意識の向き先がどこにあるのかや、優先順位の考え方の違いであるとも言える気がします。