新ドラマ「ハル ~総合商社の女~」のモデル商社はどこ?

仕事/キャリア

秋のテレビ新番組で少し楽しみにしているものにハル ~総合商社の女~」
公式番組サイト)があります。

ドラマの舞台となる「総合商社」がどのように描かれるのかに興味があります。

総合商社って、広告代理店とかと並んでザ・日本のモーレツサラリーマンの象徴で、

ドラマでもベタな会社名に「XX商事」みたいなものが使われガチですよね。

でも、「総合商社」の実態ってよくわからないですよね。

なんか海外貿易とかしてそうなイメージというのが普通の人の感覚ではないでしょうか。

この総合商社がこのドラマでどのように描かれるのでしょうか。

プロデューサーの実体験がもとになっている企画ドラマ

実はこのドラマはプロデューサーである栗原美和子さんの「実体験に基づいたオリジナル企画」ということだそうです。wikiにもこんな記載があります。

大手総合商社に転職したシングルマザーの女性が海外にある病院の買収やラーメン屋再建など様々な部門における諸問題に真正面から立ち向かうさまを描く。ドラマのプロデューサーを務める共同テレビの栗原美和子の実体験に基づいたオリジナル企画

実体験に基づいた総合商社の描かれ方って気になりますよね。

モデルとなった総合商社はあの会社(と予想)

まだドラマ開始前なのであくまで予想なんですけど、モデルとなっている商社はズバリ「住友商事」だと思います。

というのは、栗原さんの経歴を見ると住友商事と関係のある会社でお勤めであった時期があるからです。

番組プロデューサーの経歴

栗原さんは2011年から2013年にLaLaテレビなるケーブルテレビ局でエグゼクティブプロデューサーをしています。

このLaLaテレビはジュピターエンタテイメントという会社が運営しています。

さらにこのジュピターエンタテイメントはJ;COMなどでを運営するジュピターテレコムの100%子会社のようです。

で、ここまで来るとお分かりの通り、ジュピターテレコムは住友商事(とKDDI)を主要株主とする企業です。

最近はあまりそういう言い方をしなくなりましたが、いわゆる「ケイレツ」という関係でしょうか。

構造を書くとこんな感じ

住商との関係

(親会社)住友商事

(子会社)ジュピターテレコム

(孫会社)ジュピターエンタテイメント (LaLaテレビを運営) ←ここで栗原さんはプロデューサーしてた

栗原さんの実体験とは、おそらくそ親会社の親会社である住友商事と直接的にも、間接的にも触れる機会があったものを指しているのだと想像します。

ハル ~総合商社の女~」で描かれる総合商社がこの「実体験」をもとに企画されているとすると、リアリティがありそうで楽しみです。

見所は現在の総合商社の描き方

現在の総合商社は「商社」という言葉から連想される「貿易会社」ではなく、投資会社としての色が非常に強いと言われています。

例えば前述の住友商事もジュピターテレコムへ「投資」をしてジュピターテレコムの株主としてその成長を支える存在になっています。貿易なんか全く関係ないですよね。

総合商社のビジネスモデルは近年は経済誌などでその実態が特集されるようになりましたが、それでも一般の人たちにはイメージを掴みにくい話だと思います。

なので、この新ドラマで現在の総合商社の「投資会社」としてのあり方が描かれるのであれば、
初めてそのイメージが定着するかもしれません。

プロデューサー自体が住友商事から見れば「孫会社」で働いた経験があることからも、
おそらくは数百の会社を束ねる総合商社という業態がどのようなものであるか、
リアリティある描かれ方がされるのではないかと思います。
ハル ~総合商社の女~」での新しい商社の描かれ方に注目です。

第一話見た後の考察:モデルとなっている商社について

「ハル ~総合商社の女~」の第一話を見ました。

物語の舞台となる総合商社「五木商事」は番組プロデューサーの経歴からモデル商社は住友商事と考えていましたが、

どうやらいわゆる5大商社(三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅)あたりの組織やビジネスを組み合わせて作成されている感じがしました。

まず、規模感は住友商事に近いかと思います。

ドラマの中で五木商事は社員数5000人、グループ企業800社、連結従業員70,000人という説明がありました。
住友商事は社員数5295人、連結ベース65,662人で連結子会社626社です。
(持分法会社も入れると900社ちょっとになります)

住友商事の会社概要

一方、コンビニやドラッグストア、病院の経営などの話も出ていたと思います。

住友商事はドラッグストアの「トモズ」が系列にあります。

しかし、コンビニや病院だと他の商社がやっている印象です。

例えばコンビニなら、三菱商事がローソン、伊藤忠商事がファミマの大株主です。

病院経営は三井物産が近年海外の病院グループ買収をやってました。

次週予告にあった「シンガポールの病院買収」なんてのはまさに三井物産が近年やった案件と全く一緒なので、
それをモデルにしているかと思います。

こんな感じで、各商社の特徴的なビジネスや案件をモデルにしながら展開していくのかなと思います。

考察:リアルだなと思ったところ

「ラーメン屋の再建」がサクッと成し遂げられたのはドラマならではですが、部署間の力関係とか、同期の繋がりとか、日本の大企業の特色がしっかり現れてて個人的には面白いと感じました。

同期でも部長と課長の差が出る

もともと日本企業には同期横並びの意識がありますが、当然差も着きます。

1話で活躍したラーメン事業の担当者は「課長」でしたが、同期は「部長」でした。

リアルなのは同期は空輸部の部長で、同期である課長はリテイル事業部に飛ばされています。
これは「同期が部長になったので、同じ同期の課長がいたらお互いにやりにくい」という日本企業の配慮(というか忖度?)でありがちな話と思います。

また「万年、課長止まり」という表現がありました。
近年、「課長になるのも難しい」と言われている時代ですが、古き良き大企業は「少なくとも課長にはなれる」ということだと想像します。

また、課長でありながら「ラーメン事業担当」ということで部下らしい人も一切出てきませんでした。
このことからも「課長」と言ってもいわゆる「ラーメン事業課」という部署があるわけではなさそうです。

総合商社の課長というと偉いように聞こえますけど、
おそらく五木商事では「課長」というのはあまり出世した人というイメージではないようです。

ちなみにリテイル事業部が左遷部署ではないはずですが、
本人的には異なるキャリアなので左遷と感じているのかもしれません。

ラーメン店やコンビニへの出向

ドラマの中で、ラーメン店やコンビニに出向して現場に立つ経験をしたという描写がありました。

これもリアルだと思います。
「出向」というと半沢直樹のように片道切符のイメージがありますが、
最近の大企業、特に商社ではキャリア形成の一環としてグループ会社への出向を行うことがあります。

ドラマの登場人物は出向時には「こんなはずじゃなかったと思った」と述べていますが、少なくとも最近の商社の若手はいろんな会社に出向することを自然と思っているのではないかと想像します。

縦割りの組織

社長と副社長は仲が悪いとか、「経営企画部の仕事はXX、リテイル事業部の仕事はXXで部署が違う!」とかそういう縦割り組織を感じさせる描写がありました。

これも日本の大企業を想起しますね。

特に総合商社は昔から初期配属先の部署が一生ついて回るということも言われています。

しかし、近年各商社が縦割り組織をがらがらぽんしたり、新しい組織を作ったりして、旧態然の縦割り組織にメスを入れている例が頻発していますね。

ドラマの経営企画部長も言っている通り、「旧態然の組織に風穴を開けるんだ」というのは各商社のテーマなのでしょう。

副社長でも思い通りにできないことがある

商社の縦割りを表す例だと思いますが、「ラーメン屋の撤退」を副社長が進めようとしても、実際にはそれを担当する部署であるリテイル事業部の担当者や、今回小麦粉を空輸することに協力した空輸部の部長がそれに反して行動することができてしまいます。

例え副社長といえど縦に入っていない部署に直接的に命令を下すことはできないんでしょう。
(リテイル事業部は、副社長のラインではないのでしょうね)

これもなんだかリアリティある感じがしました。

考察:リアルじゃないところ

わたしは個人としては楽しんでみることが出来ているのですが、あくまでドラマのため設定やストーリーは実際の大企業では少しあり得ない部分もあるかと思います。たぶん番組スタッフも分かったうえで、割り切ってやっていると思います。

経営企画部が個別の案件に関わる

第一話では主人公ハルの所属する経営企画部がラーメン事業の撤退についてプランを練っていました。「経営企画部は重要な案件を担当する精鋭部隊」というような説明がナレーションとして入っていましたが、これは少し無理がある気がしました。

大企業の経営企画部というのは個別案件ではなくて、会社全体の方針(経営計画)を策定したり、経営層の意思決定に資する事務局的な役割を担っているものと思います。

行ってみれば、役員会議の事務局的な部分があるはずです。

重要な案件だからといって、個別対応対応するような特殊部隊、というわけではないと思います。

実際の事業は各ビジネスラインで実施するはずで、個別案件に経営企画部が関わるのは変だと思います。

ドラマ上でも「経営企画部は数字の精査だけするのが役割でしょ?」という話が出ていましたので、本来は個別案件の推進に深入りするのではなく、事業投資や事業撤退の際のアドバイザー的な関与の仕方なのかもしれません。

それも経営企画部ではなくて、経理部とか審査部とかリスク管理部とかそういう管理系の部署が普通はやるのではないかと思います。

ラーメン事業の撤退に副社長が口を出す

経営企画部が会社全体の方針に関わるのが本来の仕事だというように、副社長もわざわざ「ラーメン事業の撤退」に対していちいち意見を言わないと思います。(この副社長がビジネスライン上の上長なら別ですが)

例えば、会社経営を揺るがすような大型投資の話ならともかくとして、恐らくは生活産業グループ(とドラマで出てきていたはず)の小規模事業であるラーメンフランチャイズ事業の撤退可否について、わざわざビジネスラインにいない副社長が口を出すなんてことはないでしょう。

もしくは、この副社長と仲が悪いと予想される社長やその他役員が生活産業グループ出身で、その邪魔をするというのが目標だったりするのでしょうか?

これがもっと規模の大きな投資(コンビニ買収とか)なら経営層が出てくるのもわかりますが、そうでなければ各事業部の中でほぼ決裁されるのでないかと思います(もしくはこのラーメンフランチャイズがすごい大きな事業なのでしょうか)

空輸部に小麦粉の輸送を依頼

第一話では、空輸部の部長に小麦粉の輸送をお願いするというシーンがありました。

総合商社に空輸部とかあるんでしたっけ?

例えば住友商事の組織図を見てみると 住友商事組織図

近そうなのは「物流管理部」というやつでしょうか?

例えばこの物流管理部が各事業部の物流1つ1つを手配しているとは到底思えません。

ドラマで説明があったとおり、五木商事は800の関連会社があります。今回の小麦粉を利用するのはその1つの会社ですよね。

関連会社とは言え、ラーメンの小麦粉の手配を大商社の物流部門が直接受け持ちはしないと思います。普通は、専用業者を直接起用するとか、物流子会社が対応するのではないでしょうか。

空輸部の部長が指示を出すと物流子会社が動いてくれる、ということもあるのかもしれませんが、そんなことをやっている暇があるなら直接日本通運なりに依頼すれば良いことです。(社内ルールでダメなのかな)

でも、このシーンは日本企業における同期の友情とか絆を描く意味ではとても好きです。

ドラマなので、演出上本来は本社でやらないような仕事が描かれるのは仕方ないと思います。あまり細かなリアリティを求めるよりも「大きな会社ならこんなこともできるかもしれないな」とか「日本の大企業ってこういうとこあるよな」という温かい目で見るのがよいと思いました。