ハル総合商社の女を楽しみながら見ています。
第2話、第3話を見たところで、思うところを書いてみたいと思います。
目次
第二話は三井物産の案件にそっくり
シンガポールの病院買収の案件でした。これは三井物産が2018年に実施したアジア最大の病院グループへの出資にそっくりの内容でした。
人たらしというのがキーワードで出てきましたが、「人の三井」と形容される三井物産の風土にも何となく通じるものがあったように思います。
実際とは異なるところ
病院買収という大掛かりな案件で、物語ではパートナーとなってくれる日本の病院グループオーナーを口説き落とすことで一件落着となっていました。
実際のM&Aでは、パートナーが決まって一件落着ではないと思います。
今回は日本サイドが一方的に買収する話になっていますが、そもそも先方の病院が自らを売りたいと思っているのかどうかわかりませんでした。
もともと公開されている入札案件なのでしょうか。もしそうだとすると「今が買いなんです!」とドラマでシンガポール駐在員が言っていましたが、今が買いとハッキリわかるような病院であれば他に入札をしてくる競合はいないのでしょうか。
競合と競って、最後にパートナーとのシナジーをアピールして入札を勝ち取るというのもストーリーとしてはありだったかと思います。
実際に、日本のノウハウをもつ病院グループ、現地の不動産王、という組み合わせはなかなか強力なパートナーであり、良い組み合わせなのではないかと思います。
「五木の名前をフルに使え」のリアリティ
シンガポールの駐在員が、現地不動産王をパートナーにすることに成功しています。五木商事ともともとコネクションがあったということです。これは現実の総合商社でも、現地の財閥や有力者と結びつきが強いことがありでしょうから可能性のある話と思います。
たぶん、現実だと一介の駐在員一人ではなく、シンガポール支社(支店?)の一番偉い人や、日本からも役員レベルが対応するような気がします。
コンプライアンス上の問題点
病院オーナーの家に日参して口説き倒すという描写がありました。これは現代だとアウトになる可能性も高いのではないでしょうか。特に、車で帰ってきて門が開いたところに飛び込む描写がありましたが、下手したら不法侵入ではないかと。
昨今の日本企業は「コンプライアンス」に対しては非常にセンシティブなので、
明確な法律違反ではなかったとしても、病院オーナーから五木商事にクレームが入ったら、即刻コンプライアンス違反で担当外される事案だと思います。
コンプライアンスでいうと、第三話で「1週間以内に新規事業ができなければ、日和工業の言い値以上で五木商事が株を買い取る」という覚書を上司に相談せずに結んでいたという描写がありました。これも完全アウトだと思います。
経営企画部長の権限がどのようなものか分かりませんが、ドラマ上は副社長に伺うべきだったと描写されていたので権限を越える契約を勝手に結んだということで、完全アウトだと思います。
スポンサーに住友商事と日立物流
ドラマ前のCMを見ていたら、住友商事のCMが流れていました。五木商事のモデルと思われる住友商事がスポンサーというのは面白いですね。
ドラマの中で五木商事の関連会社が「五木さんの関係会社にしてくれて感謝している」「五木さんには本当にお世話になっている」と語るシーンが何度か出てきました。
大企業の傘下に入ることで助かる例があるのは分かりますが、白か黒ではなく、良い面も悪い面もあると思います。
スポンサーに住友商事がいることで悪く描きにくい、なんてことはないと思いますが、ちょっと美化されているようにも思いました。
ちなみに日立物流のCMが流れていました。第三話には「日和製作所」という「買収した会社の特許をとるだけとって、つぶしてしまう会社」が登場します。
名前からすると日立製作所がモデルと思われても仕方がないのですが、そっちはスポンサーの日立物流(の親会社の日立製作所)からはクレームなかったんでしょうか。
新規事業の立ち上げに五木商事から出向者
第三話の最後にさらっと「新規事業が軌道に乘るまで、五木商事からの出向者がサポートします」という話が出てました。
以前にも書きまししたが、近年の大企業、特に総合商社では関係会社への出向は当たり前と聞きます。出資先の経営再建のために役員が送り込まれている例なんかがちょこちょこ経済ニュースに出てますよね。
片道切符なんてこともなく、今回の例のように特定のミッションを完了したり、一定の期間を経たら親会社に戻るのではないかと思います。(さすがに社長として行った人は転籍?)
さっくりと描かれてましたが、わりとリアリティのある描写と思いました。
(ただ、30%出資している会社にこれまで出向者がいなかったというのも少し変な気がしますが)